兵庫県高等学校体育連盟テニス部

ホーム資料文献回顧録平成15年度男子回顧録 市立西宮高校テニス部顧問 中嶋智之

平成15年度男子回顧録 市立西宮高校テニス部顧問 中嶋智之

 「テニス王国」を宣言する兵庫県のテニス界において、高校男子は常に園田・夙川の女子に-歩譲った感があった のは否めない。しかし平成15 年夏、ついに男子テニス界にも高らかに王国再建の槌音が響いた。「目指せ頂上」をスローガンに平成13 年度総体や平成15年度選抜の3位をはじめ、虎視眈々と全国制覇を窺ってきた明石城西が、つい に長崎夢総体において、個人戦シングルスで澁谷祐樹が優勝、団体では準優勝という快挙を成し遂げた。今は大会のホームページを通じてリアルタイムにスコアを入手することができるが、団体決勝の対名古屋高校戦もどちらに勝 利が転がり込むかわからない、一進一退の好勝負であった。惜しくも紙一重のところで頂上に到達することはできなかったが、心からこの快挙を祝したい。それにしても全国チャンピオンの澁谷がシングルス2で出場していることに、 明石城西の層の厚さを感じざるを得ない。また、澁谷の優勝、明石城西の団体準優勝だけではなく、中山・畑(仁川)が複3位に、谷(関学)と脇(明石城西)がそれぞれ単ベスト16に進出し、兵庫県の層の厚さを見せつけた。ちなみに 澁谷のシングルス決勝の相手である吉備(柳川)も兵庫県の出身であり、「テニス王国兵庫」が着実に築かれつつあることを実感させられる大会であった。総体の個人戦で兵庫県勢が優勝したのは昭和63年以来のことであるが、団体戦の優勝となると昭和39 年の甲南まで遡らなければならない。

 平成のテニス王国兵庫に男子団体の優勝旗を掲げるのは果たしていつ、そしてどの高校なのか? 楽しみに見守りたい。

 さて、平成15年度の県内の大会に目を移す。

 まずは県総体。団体ベスト8には第1~7シードまでの明石城西・関学・仁川・甲南・三田・東洋大姫路・長田と第9シードの北須磨がほぼ順当に進出した。準々決勝でも順当に上位4シードの明石城西・関学・仁川・甲南が勝ち上がり、決勝は第1シード明石城西に、第2シード関学を破った第3シード仁川が挑む形となった。81は仁川がリードし、82はフルセットにもつれこむ死闘となったが、最後は明石城西が底力を見せ、2年ぶりの全国切符を手に入れた。

 個人戦では、全国を制した澁谷が県を征することも出来ないほどの高いレベルの試合が繰り広げられた。単決勝は、準決勝で2セットともタイブレークの末に澁谷を退けた谷(関学)と、ダブルスペアの脇をフルセットの末に下した小川(明石城西)の対戦となった。フォアの強打を左右に打ち込み続ける小川に対し、最近の高校生には珍しいスライスの効いた芸術的なシングルバックハンドを武器に素早くネットに詰める谷の息詰まる熱戦は、今旬のプロプレーヤ ーに例えるならばフェレーロ対フェデラーといったところか? ファイナル6-4で谷が勝利し、念願のシングルタイトルを手に入れた。複では、スピード豊かでコンビネーション抜群の中山・畑組が県民・近畿・楽天杯連続優勝の貫禄を見せて小川・脇組を下し、この一年間の主要な大会を総なめにした.プロで言うなれば複でグランドスラム達成といったところであろう。その他、結果的には総体の出場権を手に入れるまではいかなかったが、中山(仁川)をワイパーの如く左右に走り回らせた西山(三田)のハードヒットや、多彩なショットを効果的に繰り出して一時は小川を混乱に陥れた金瀬(北須磨)のプレーなども個人的には非常に印象に残った。全体的に個性的なプレーヤーが多く、スリリングで見ていて楽しい(顧問の先生方はそれどころではなかったであろうが…)試合が多い大会であった。

 世代が交代して夏の県民大会。数々のスリリングな試合を演じてきた全国レベルの上級生がごっそり抜け、大会前は「今年はかなり小粒かな?」と思われたが…。さすがに強豪校の選手達はそれなりのレベルにまできっちりと仕上げてくる。これが「伝統」を築き上げたチームの強さか。本戦2日目からは会場の赤穂海浜公園テニスコートが明石城西対関学の対抗戦会場と化した。単は準々決勝の対戦がすべて「明石城西vs 関学」の対戦となり、結果はすべて明石城西側に軍配が上がった。中でも、ノーシードながら細身の体から繰り出す弾丸フォアを武器に第5シード伊勢、第4シード萩原大輔の関学勢を撃破してベスト4まで進出した1年生松下の活躍は「次代も明石城西か?」と周囲に感じさせるには十分であった。結局、昨年の新人戦決勝と同じカードになった決勝では、藤原が第1シードを守ってペアの 岡田を下して優勝。ダブルスもベスト4には明石城西と関学が2本ずつ入り、藤原・岡田組が駒田・沓脱(関学)の1年生ペアを接戦の末に下し、藤原は二冠を達成した。藤原はこの後の近畿大会でも単準優勝、複優勝を成し遂げ、着実に明石城西の柱として成長していることを感じさせた。また、駒田。沓脱両選手は11月の新人戦個人戦において駒田が単複優勝、沓脱が単準優勝、複優勝を飾り、間違いなく次代の兵庫県をリードしていく選手であることを強烈に印象づけた。この大会は明石城西・関学の2校と、その他の学校との差を今まで以上に大きく感じさせた大会であった。

 そして秋の新人戦団体。団体ベスト8には第1~4シードまでの明石城西・関学・灘・仁川、第6~8シードの長田・甲陽・神戸、そして第5シード三田を下した雲雀丘が進出した。準々決勝でも順当に上位4シードが勝ち上がった。リーグ戦の結果、明石城西が優勝、2位関学となったが、3位となった灘の健闘が光った大会でもあった。特に関学戦は2-3で敗れはしたが、シングルス2のタイブレークの結果が逆であれば…、兵庫県のテニス史に違った一ページが開かれていたかも知れない。というのは少し大げさであろうか?

 結局、その後の近畿団体でも明石城西が三連覇を果たし、関学も3位となって、来春の全国選抜の切符を手に入れた。この2校がより成熟した「テニス王国兵庫」の力を全国で発揮してくれるものと期待している。

 最後に、役員となりハイレベルのテニスを見る機会が増えれば増えるほど、自校の選手達の目標をどこに設定すればいいのか分からなくなってしまう。「県で優勝だ!!」と威勢のいいことを言っても、全国レベルの選手達を何度も見てきた自校の生徒達は、私が本気でそう思っていないことを容易に見透かしてしまう。こうした中、1月に「第一回近畿6府県公立高校対抗戦」が開かれた(大阪府は不参加)。兵庫県からは新人戦団体でベスト8に入った長田と神戸の2校が参加し、それぞれ優勝・第3位となった。ここでも兵庫県のレベルの高さを見せつけた。今後、この大会の存続は未定であるようだが、全国大会に出れなかった公立高校チームの新たな目標として、ぜひ発展させていただきたい。 そして近い将来、自校のチームが「近畿公立の雄」として名を馳せることができればな~と思っている。最も、こんなことを生徒に言えば「全国は諦めたんですか?」と突っ込まれそうであるが.・・・

 「全国」だとか「雄」だとか、「捕らぬ狸の.…」はここまでにして、今年こそはラケットを持った経験のある生徒がクラブに入ってくれることを期待しつつ、筆を置くことにする。

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