兵庫県高等学校体育連盟テニス部

ホーム資料文献回顧録平成21年度男子回顧録 三木高等学校 二木俊昭

平成21年度男子回顧録 三木高等学校 二木俊昭

 今年も1878人がエントリーして、県総体、男子シングルスが行われた。この裾野の広さは、他府県にはない兵庫テニスの宝である。選手たちは、他からの助けが一切許されないコートで、練習を通して培った精神力と磨いた技を試す。優勝する一人以外は、どこかで敗れ、その敗戦を通して、相手との技術の差、それ以上に自分の精神面の脆さに気付かされ、悔しい思いをする。試合では、普段の生活では気付かない自分と向き合わされる、濃い時間が流れる。部員全員が脇役ではなく主役なりうる、それが兵庫のテニスの良さだと思う。

 さて、新型インフルエンザに振り回された今年、県総体の日程も一部変更することを余儀なくされた。県総体団体戦では、全国選抜高校テニス(団体)においてベスト4に入った甲南が、準決勝で明石城西に敗退し、兵庫県で勝ち抜くことの難しさを痛感させられる結果となった。決勝は7連覇を狙う明石城西と新進気鋭の相生学院との闘い。3試合が並行して行われ、第1セットは相生学院がすべて取り、観る者に相生学院の初優勝を予感させた。ところが、ダブルスで攻めの姿勢を貫き通した吉山・西川(明石城西)が第2セットを競り勝ち、流れを引き寄せ逆転勝利。S1でも浅井龍雅(明石城西)が宇治崇之(相生学院)に第2、第3セット、ともに61で奪い返し、2-1で7連覇を達成した。試合後、コート中央で宙に舞った明石城西の関係者の方々の姿が、例年以上に眩しく思われた。

 個人戦シングルスは、池川浩史(相生学院)が安定したショットと、1年生とは思われない落ち着いた試合運びで、選抜ベスト4の上原伊織(甲南)を準決勝で84で破り、決勝でも沼田孝彰(甲南)に76、61で勝ち、優勝した。また、成長著しい嶋田颯人(相生学院)がベスト4に入り、インターハイへの出場権を獲得した。ベスト4すべて3年生という昨年の結果とは違い、インターハイへの切符を手にした4人のうち3人は1、2年生という結果となった。今年だけでなく、これからの飛躍も楽しみである。ダブルスでは明石城西同士の決勝となり、浅井・朝倉組が吉山・西川組を64、64で下し優勝した。

 全国総体団体では、明石城西が3回戦で優勝校の秀明英光(埼玉)に当たり敗退した。シングルスでは沼野孝彰(甲南)が初戦で敗れたものの、相生学院の池川浩史、嶋田颯人は3回戦まで勝ち進み、甲南の上原伊織はベスト8。ダブルスは浅井・朝倉(明石城西)がベスト8、吉山・西川(明石城西)ベスト16に入った。

 夏の新人戦、3年生が退くと相生学院の強さが際だち、シングルスではベスト4に池川浩史、諫山航平、宇治崇之の3名が名前を連ねた。相生学院勢の中で一人意地を見せたのが甲南の金江紀幸だ。特に、準決勝の宇治との試合は一進一退の好ゲームで会場で観ている者の目を釘付けにした。結局、タイブレーク11-9で金江紀幸(甲南)が勝利。決勝では県総体を1年で制した池川浩史(相生学院)が金江紀幸(甲南)を62、62で下した。ダブルスでも池川・諫山(相生学院)の1年生ペアが粘る藤・山本(関西学院)を63、64で下して優勝。これで池川は単複を制することとなった。

 秋の団体戦、本戦は例年の総合運動公園からしあわせの村に会場を移して行われた。予想通り相生学院が圧倒的な強さを見せて優勝。準々決勝まではもちろんのこと、明石城西、関学、甲南との4校で行われた決勝リーグでも、落としたのは、上原伊織(甲南)が池川浩史(相生学院)を上級生の意地を見せて97で競り勝った1試合だけであった。近畿大会出場枠は2校。残りの1枠を賭けて激しい戦いを見せたのが関学と甲南であった。上原、金江の2枚看板を持つ甲南がS1、S2を取り、ダブルスを強化して臨んだ関学がD1、D2を取り、S3の山本貴大(関学)が97で古村賢太(甲南)を破り、3-2で関学が競り勝ち、近畿大会の出場権を獲得した。この勝利の陰には、本戦1週間前のしあわせの村のテニスコートで、監督が大声で檄を飛ばしてボレー強化に努めた関学の選手達の姿があったようである。

 全国選抜近畿地区大会でも甲南を破り、勢いに乗った関学は5位に入り、全国選抜への切符を手にした。相生学院は近畿でも圧倒的な強さを見せ、1ポイントも落とさず優勝…。いよいよ、兵庫の学校が、男子団体で全国の頂点に立つ日がすぐそこまで来ていることを予感させる闘い振りであった。

 公立高校においても、今年で7回目を迎える近畿公立高校テニス大会で、明石城西が優勝、長田が5位入賞した。兵庫県の代表2校を各地区の代表が集い兵庫県予選大会で決定するようになって3年目となる。まずは「地区の代表」として兵庫県予選大会に出場することを目指し、「近畿」という冠のもと戦える可能性があることが、いつも私学に圧倒されている公立高校の選手達にとってチームの目標となり、大きな励みとなっている。

 最後に、数年前になるが、夏の指導者講習会で私はテニス経験がほとんどないという先生方を対象にしたグループを担当させていただいた。そこで、ある公立高校の女性の先生に「球出しの仕方を教えてください」と依頼された。他のグループでドリル練習のメニューが紹介されている中、炎天下、2時間余り、汗びっしょりになって、ひたすら球出しの練習をされた。講習会終了後、「今まではコートの隅で生徒達の練習を見ているだけでしたが、これからは練習の中に入って、球出しをしてあげることができます」と喜んでおられたお顔が今でも目に焼き付いている。 トップ校はもちろんのこと、テニスコートに足を運び、生徒たちと時間を共有し、「生徒たちに何かを…」という熱い思いによって、この兵庫テニスの大きな大きな裾野が支えられていることを感じる。

 そういう中、私は、自分の学校の生徒たちが、テニスの試合を通して、自分と向き合う貴重な時間を経験することができるように…と同好会の立ち上げに奔走する日々を送っている。

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