兵庫県高等学校体育連盟テニス部

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令和2年度女子回顧録 伊丹西高等学校 菅原 潤哉

2020年度は兵庫県の高校生のテニス界も新型コロナウイルスに振り回された1年であった。3月に学校活動が停止され、予定されていたジュニア大会や市内大会が中止となった。4月には緊急事態宣言が発令され、3年生の引退試合となる高校総体も団体戦、個人戦ともに中止となった。6月に学校活動が再開された後、県内各地区で代替大会が行われたが、やはり3年生部員としては不完全燃焼の引退であったことは否めない。また、滋賀県で開催予定であったインターハイも中止となった。昨年度よりインターハイ支援を兵庫県高体連テニス部としてもTシャツの購入などで行い、私自身は滋賀県まで実際に運営補助に行く予定であったため、これも残念でたまらなかった。 7月以降、少しずつ大会の開催が認められ、8月上旬には新人戦個人戦予選が各校テニスコートで開催された。しかし、予選会場での選手の行動はこれまでとは一変した。検温表の提出、無観客、セルフジャッジ、試合中以外のマスクの着用、こまめなアルコール消毒、試合後の握手なし・・・。予選会場の運営にあたられた先生方の気苦労には頭が下がる思いであった。この新しい光景は、8月19日から赤穂海浜公園テニスコートで開催された新人戦個人戦本戦でも同様であった。例年と変わらないのは気温だけで、選手と顧問のみが会場への立ち入りが許され、マスクを着用して試合を見学する姿、審判や応援の声がない静かな会場は、余計に暑さを際立たせた。そのような異例の光景の中でも相変わらずの強さを発揮したのは相生学院であったが、園田学園や雲雀丘学園の選手の健闘も光った。シングルスのベスト8のうち6人を相生学院の選手が占め、優勝は相生学院の武本選手、準優勝も相生学院の石川選手であった。ダブルスのベスト4はすべて相生学院のペアが占め、武本選手・石川選手のペアが優勝した。 10月初旬に各校で開催された新人戦団体戦も、間隔を空けての集合、試合前の円陣の禁止、声を出しての応援の禁止等、これまでとは違う寂しさを感じる試合となった。8校の本戦出場校のうち、加古川北、葺合、加古川南、明石城西と公立高校が4校を占めたのは、公立高校の顧問としてはうれしい限りであった。決勝リーグ戦では相生学院が危なげなく優勝を飾ったが、雲雀丘学園、園田学園、加古川南の3校の対戦はいずれも3-2で勝敗がつく熱戦であり、園田学園が準優勝となった。11月に開催された近畿大会でも相生学院は優勝し、園田学園は8位となった。 11月下旬には兵庫県公立団体戦も実施され、女子も4校の代表校が決定した。ようやくテニスの大会も例年に戻ったと感じたが、12月後半になると新型コロナウイルスの感染が再び拡大した。なんとか兵庫県内の公立個人戦を開催し、その代表を決めた頃、教育委員会からの指示で県外での大会が禁止され、団体戦で代表となっていた4校は近畿大会に参加することが出来なくなった。必死で手に入れた近畿大会への出場権を奪われた選手たちの無念さはいかほどだっただろうか。 また、この原稿を書き始めていた12月上旬、長年にわたり兵庫県高体連テニス部の活動にご尽力くださった安達泰二先生が突然ご逝去なされた。約20年前、非常勤講師であった私をテニスコートに招いてくださり、私がテニス部と関わるきっかけを作ってくださった。ご多忙の中、毎日テニスコートに足を運び、優しくも真摯に選手に向き合う姿は、その後のテニス部顧問としての私に大きな影響を与えてくれた。テニス部顧問としての第一線を退かれた後も本戦会場に足を運んでくださり、いつも優しい声をかけてくださったことが忘れられない。心よりご冥福をお祈り申し上げます。 12月も半ばを過ぎると本格的な冬が訪れ、伊丹西高校のテニスコートの朝の気温は0℃に近い。(ちなみに、今年の夏の最高気温は日陰で42℃であった。)鈍色の空の下、生徒たちと朝練を行い、冷たい手をこすりながら毎日考えている。この頑張っている生徒たちが、このままテニスを続け、諸大会に出場し、総体団体戦、個人戦で完全燃焼して引退してくれることを。当たり前だった風景が当たり前でなくなった今、切にそのことを願っている。それはどの学校の顧問の先生方もきっと同じであろう。 1月14日に再び兵庫県に緊急事態宣言が発令された。1月に予定していた阪神の諸大会も延期を余儀なくされ、テニス部の活動にも様々な制約が課された。いつまで続くか分からないコロナ禍の中、練習試合さえ許されない選手たちのモチベーションを保つのは容易ではないが、何とか工夫を凝らして練習を続けているのはテニス部に限らず、どの部活動もそうであろう。閉塞感の漂うこの冬を乗り切り、自由な活動が許された際には、思う存分練習と試合を行い、仲間と笑顔で引退を惜しむ、暖かで開放的な春を待ちわびている。

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