兵庫県高等学校体育連盟テニス部

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平成14年度女子大会回顧録 鳴尾高校 松井千寿子

 1975年(昭和50年)7月、テニス界に1つのニュースが飛び込み、日本全国を驚かせた。それは、皆さんもご存じの様にウィンブルドン大会の女子ダブルスで、沢松(現姓吉田)和子さんが日系アメリカ人アン・キヨムラ選手と組んで優勝したと言うものである。私も、幼いながらテレビの映像に釘付けとなり、優勝シーンを何回も繰り返し見たものだった。その上、沢松さんが、西宮市出身であることから、私は自分の住む兵庫県が、テニスの盛んなこと、そしてレベルが高いことをだんだん知ることになり、こんなことがきっかけで、テニスに興味を持つようになった。沢松さんは、1966年ウインブルドンジュニアシングルスでも、優勝を果たしている。

 さて、県高校総体本戦は今年も全国大会出場権をかけ、熱戦が繰り広げられた。シード1・2校の園田学園・夙川学園をはじめ、兵庫、加古川北、武庫川大附、神戸野田、明石城西が順当に勝ち上がった。最後1校に、第7の西宮南、第10シードの明石商業を破り、ノーシードながら元気で勢いのある宝塚北が名乗りを上げた。準々決勝では園田学園が兵庫を、明石城西が神戸野田を、夙川学院が宝塚北を共に3-0で破り、残り加古川北が武庫川大附を接戦の末2-1で勝ちベスト4となる。準決勝では、園田学園と夙川学院が3-0で加古川北と明石城西を破り、今年も宿命の対決となる。その決勝は、ダブルスを、2-1で園田、そして、シングルス1に昨年の総体個人戦準々決勝でも対戦した好カードである川床(園田)対尾崎(夙川)は、2-1で尾崎が勝ち、1-1となる。シングルス2は、ストレートで伊藤が加藤を破り園田学園が優勝する。本戦のみならず予選からこの大会は、3年生の最後の団体戦であり、思いも深く、チームの名誉をかけ、結束も固く粘り強い戦いが続く。また公立高校では、新入生が公式大会を初めて見 る機会でもあり、ルールも良く理解できないなまま応援に声を枯らす。だが、テニスの緊張する場面は十分理解でき、先輩と同一化できることは今後の貴重な体験となる。

 個人戦では、シングルス優勝の尾崎(夙川)、準優勝の川床(園田)、大西・須加田(園田)の4選手が、ダブルスは、優勝の伊藤・川床(園田)、尾崎・猿田(夙川)、大西・中西(園田)の3組が全国大会へ乗り込むことになった。

 全国大会団体戦は、園田学園が準決勝で大阪の四天王寺羽曳が丘に惜しくも1-2で破れ、ベスト4に終わる。この悔しさは、その後、全国選抜の地区予選である11月の近畿大会で、園田学園が四天王羽曳が丘を破り優勝するまで続く。シングルスでは尾崎が堂々全国を制し、川床がベスト4、須加田はベスト8と健闘し、ダブルスは伊藤・川床が優勝、尾崎・猿田が準優勝、大西・中西(園田)がベスト4と、兵庫の力を見せつけた。尾崎選手については、昨年より著しい成長がみられ、技術面はもとより、精神力の強さや粘りを県本戦より感じていた。そして、県本戦ダブルスで、アンパイヤーとして試合のコートにいた私に、彼女のスッマシュが当たりかけた。試合終了後、わざわざ私を捜して、謝りに来てくれたその姿に、清々しさと風格さえ感じたことを覚えている。テニスを通じて成長していく姿を見るのは、とても楽しい。

 次に、新人大会であるが、団体戦は園田学園、夙川学院をスーパー・シードとして、80校が本戦出場のベスト8を目標に、新しいチームで挑んだ。4年前からこの大会は、予選からシングル3・ダブルス2の5ポイントで行われるようになった。最近の傾向では、男子部員の増加に比べ、女子部員の減少で人数の確保が難しい現状の中、5ポイント制7人を揃える事が困難なところもあるが、今年は夏から本戦に選手を送り込めなかった我が校にとっても、この新人大会団体戦は、結果は別として少しでも希望を持って臨める大会であった。さて、ベスト8に兵庫、市伊丹、雲雀丘、明石城西、松蔭、武庫川大附の上位シードと、姫工大附が第11、宝塚北が第12シードから勝ち上がった。次に、市伊丹対兵庫の好カードは、ダブルス2本を兵庫が取り、シングルス2本を市伊丹が取り、シングルス3にかかった。それをタイブレークの熱戦の末市伊丹が3-2で勝利を収めた。このところの市伊丹の躍進はめざましく、選手の意識の高さにも驚かされる。その結果ベスト4には、市伊丹、雲雀丘、明石城西、松蔭が残り、6回戦で、雲雀丘が3 -1で市伊丹を、松蔭が明石城西を4-1と実力の差を見せ、それぞれスーパー・シードへと挑戦する事となった。準決勝は、園田学園が雲雀丘を、夙川学院が松蔭を共に5-0で破り、春の大会と同様の対戦となり、決勝は、ダブルス1でファイナルセットまでいったものの、園田学園が夙川学院に3-2で勝利をを収め、3位に松蔭、4位に雲雀丘となった。

 個人戦では、シングルスは、第1シードの久見(園田)が不参加、第2シード加藤(夙川)が優勝し、第8シードの川口(夙川)が準優勝、第3シード宮本(夙川)と、第5シード三杉(園田)が第4シードの猿田(夙川)を破り、ベスト4となる。本戦40ドローの中で公立高校の出場が13選手であり、私学を脅かす今後の活躍を期待したい。ダブルスは、第1シードの加藤・小川が優勝、第3シードの宮本・猿田が準優勝など、ベスト4まですべて夙川勢が占めた。

 今年の1月17日で、阪神・淡路大震災からまる8年が過ぎた。街や学校の使えなくなっていたコートも修復され、ほぼ元に戻った。生徒たちは、毎日平和にテニスをプレーしている。しかし、近頃何か物足りなさを感じる。闘争心の足りない生徒に、上手く指導できない自分に、「無力感と妥協」を隠せない。私もテニス部顧問になって、同じ8年が過ぎようとしている。復活せねば。毎日平和で・闘争心のない顧問にならないように、「生徒の姿は、自分の鏡」と反省し、また自分を奮い立たせよう。そして、壊れた家から出てきた、昔の懐かしい「ウッドのラケット」でテニスをしていた頃のように、テニスに感動していきたい。沢松さんが優勝した時と同じように。

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