兵庫県高等学校体育連盟テニス部

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平成19年度女子回顧録 神戸市立神港高等学校 下村勲

 本年も最後の公式戦・ウィンタージュニアが終わり、「練習納め」を明日に迎える2007年12月27日、その日は真冬とは思えない暖かい気温で、北からの風もなく、まさに小春日和であった。一年を通してもこんな快晴は滅多になく、空は雲一つなく、どこまでも天が続くような透き通るスカイブルーであった。実は前日の練習試合で私はある部員に対して、その不甲斐なさを厳しく叱責し、それが原因で胃痙攣を起こさせてしまっていた。立ち直った彼女はその日の練習にも、朝から頑張って取り組んでいたのであった。その日は二部練で、昼食を挟んで午後からの練習開始時間にコートに現れた私は、彼女を含む我が校の部員全員に
「おい!コートで大の字になって寝るぞ!」と切り出した。
「.....ハイ。」

 こんな指示をしたのは初めてなので、部員が戸惑っているのが手にとるようにわかった。
「こんな気持ちのよい天気は滅多にないっ。皆で空を見るぞ。」
「ハイッ!」

 オムニコートの温もりを伸ばした背中に感じ、見上げた天空は予想を遙かに超えるスケールの大きさで、我を忘れ、心が洗われた。部員も「気持ちいい」とか「スゴイ」とか思いっきりリラックスしている様子がうかがえた。思わず私は真っ黄色のニューボールを天高くヒットした。「ウワー!最高!!」と聞こえたのも束の間、ボールはある部員を直撃する勢いで急降下!焦った部員は逃げまくった。それを見た他の部員は笑い転げて、その笑い声はスカイブルーに吸収されていった。前日の胃痙攣騒動といい、その日のほのぼのとした練習前の風景といい、これが部活動の醍醐味だと思い、そんな些細な出来事も私の大切な今年の回顧となるのである。しかし今年は高体連の回顧録を書けと言われ、例年同様兵庫県の上位陣の活躍を記すはめとなった。県の上位に我が校が食い込んだわけでもなく、執筆が回ってくるとは予期せず一年間ボーっと大会に臨んできて、なおかつ記憶力に乏しい私には、これまで執筆された先生方のように、手に汗握る大会の詳しい描写はできなかったことを先に一言お詫び申し上げたい。

【総合体育大会】

 4月からの県総体・団体の予選を勝ち抜いてきた四校は、戦前の予想通り上位シードの四校であった。園田学園、夙川学院、明石城西そして駿台甲英である。準決勝の一つ目は第1シードの園田がダブルスとシングルス2をそれぞれストレートでとり、第4シード明石城西をくだした。そして二つ目の準決勝は"旋風"を巻き起こした第3シード駿台甲英と第2シード夙川学院の対戦である。この対戦は夙川が健闘を見せたが、最後は駿台が接戦の末2-1で競り勝った。"旋風"というのは、駿台甲英はご存じの通り、ここ数年ジュニアの有望選手が集まり始め、急速に兵庫県テニス界上位に食い込んできた学校である。そして今春、全日本室内選抜ベスト4など数々の実績を残している古賀愛を始め、強豪選手を擁し、団体戦初出場ながらインターハイの切符を獲得しようと、この大会に臨んできたのである。さて、その駿台・古賀に対して夙川シングルス1の林は第二セットをタイブレークに持ち込み、あと一歩ということろまで追い込んだ。しかし惜しくも敗戦、夙川の敗退を決定づけた。こうして決勝は園田学園と、団体戦初出場で初の 決勝に進出した駿台甲英の組み合わせとなった。決勝戦の結果はダブルスとシングルス2を園田がともにストレートでとり、園田の勝利を決定づけたのであるが、途中棄権に終わった園田シングルス1の鍋谷が駿台・古賀に対してタイブレークの末に第一セットをとったことは、さぞかし両隣で進行している園田の選手に大きな勇気と力を与えたことであろう。昨年のウィンタージュニアにおいて二人は決勝戦で対戦しているのであるが、その時鍋谷は古賀にストレートであっさり敗れている。その同じ組み合わせとは思えない鍋谷の"好スタート"であった。暑さ対策、個別対策、技術的精神的成長、執念、意地、いろんな要素が絡んでいたと推測される。こうして今年の兵庫県高校総体は3-0で園田が優勝、全国総体の切符を獲得した。

 そして"青春・佐賀総体"における園田学園。まず石川の星陵を2回戦であっさりくだし、3回戦では強豪・神奈川の湘南工大付属に対して接戦の末、競り勝った。準々決勝ではこれまた強豪校・静岡の富士見ヶ丘を相手に接戦をするが、遂に力尽き、惜しくもベスト8に終わった。残念ながら兵庫県代表は昨年の兵庫インターハイに引き続き今年も全国の覇者となることはできなかった。しかし、テニス王国・兵庫の名に恥じない立派な"ベスト8"であったといえよう。

 個人戦は県総体シングルスにおいて堂々と優勝した鍋谷(園田)、決勝戦で団体の決着をつけたかったが無念の準優勝に終わった古賀(駿台甲英)、準決勝に進んだ松島(園田)、林(夙川)の4人が全国総体に出場。そして全国総体では古賀がベスト8、鍋谷が16入りの健闘を見せた。ダブルスでは県総体優勝の広瀬・松島組、同準優勝の鍋谷・内仲組(以上園田)、そして同3位の林・井若組(夙川)が出場した。鍋谷・内仲組が全国の舞台でも決勝まで駒を進め、決勝戦では長尾谷の選手に敗れたものの見事インターハイ準優勝に輝いた。大健闘である。

【新人大会】

 今年から新人大会の個人戦は昨年までの県民大会の日程・会場で行われることになり、近畿高校テニス大会への選考会も兼ねる高体連主催の大会となった。新人大会においてもまず個人戦で園田学園の活躍が目立ち、シングルスで本戦に出場した選手は最多の21名であり、層の厚さは群を抜いた。因みに本戦出場数が多い学校は、続く城西の8名、夙川の7名、そして仁川学院からの6名であった。駿台甲英は部員全員の5名が本戦に出場しただけでなく、上位に進出し5名全員が近畿大会の出場権を得た。あっぱれ!!優勝は駿台の古賀で、決勝戦では園田の松島をストレートでくだした。またダブルスではベスト4の3組が園田勢で、決勝戦も園田どうしとなった。同校決勝を征したのは広瀬・松島組で、準優勝は良永・大塚組であった。

 団体戦については、予選が昨年までの日程と少し変わって10月初旬に行われた。県総体、新人個人戦と大活躍した駿台甲英は全部員が5名で、勝ち上がったとしても近畿選抜、全国選抜の出場権を得られないとして、団体戦にはエントリーしなかった。その結果第1シード園田、第2シード城西、第3に夙川、第4芦大附、第5仁川となった。そして予選を勝ち抜いてベスト8に残ったのは上記の上位シード校に加えて武庫川、雲雀丘、加古川南であり、いずれも8シードまでの学校が順調に勝ち上がったのであった。8校は10月末の総合運動公園に舞台を移す。総合運動公園における準々決勝は各試合とも第1~第3までの上位シード校が圧倒的な強さで征し準決勝に駒を進めたが、第4シードの 芦大附属と第5シードの仁川学院の対戦だけは例外であった。両校2ポイントを獲得し、迎えたシングルス3の勝負が大接戦となる。最後は仁川の上久保が8-6で芦大・藤猪をくだし初のベスト4に進んだ。ベスト4進出校による決勝リーグは園田が危なげなく3勝で貫禄優勝。そして2勝1敗の城西が準優勝に輝いたが、2位争いとなった夙川戦は大変見応えのある展開となった。スコアは3-2で城西の勝利であったが、山場では城西のエース堺が夙川・岡屋を破り勝負を決めた。1位、2位校は近畿選抜に出場し、近畿選抜では園田が3位、城西が7位の成績を残し春の全国選抜への切符を手にした。今から二校の活躍が非常に楽しみである。

 最後に昨年はインターハイと国体が兵庫県で開催され、出場した選手だけでなく大会を運営する上で多くの高校生、多くの先生方が参加しました。苦い思いや不安もあり何とか乗り切った部分もいくつかありましたが、感動も多々ありで非常に充実した年でした。そして今年。前年の経験から生徒も先生も何となく余裕と自信を持って臨んでいるシーンが見られたように思います。先輩の姿を追ってそれを越えようとする高校生、それに応えて熱い思いで指導する顧問の先生方、何かしら一回り大きくなった兵庫県!そんな気がします。私は生徒に試合の結果の重みの話もしますが、テニスが強くなること以上に大切なことはテニス部活動を通じて多くのことを体験し、感じ、そして人間として成長することである、ということをよく話します。でも実は我々教師も生徒とともに成長していってるんでしょうね。知らないうちに....。これからもお互い頑張ってまいりましょう!スカイブルーにいつまでも、いつまでも感動したいですね。

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